アメリカコアジサシ コアジサシ 交雑ひな初確認 神栖

茨城新聞
2017年10月14日

神栖市で2014年に国内渡来が初確認されたアメリカコアジサシと、絶滅危惧種でもあるコアジサシの交雑ひなの誕生が同市波崎の営巣地で確認された。調査を続ける地元の波崎愛鳥会(柳堀弘会長)と千葉県の山階鳥類研究所が明らかにした。両種の交雑ひな確認は「例がない」としている。同会事務局長の徳元茂さん(68)は「静かに見守りたい」と話し、調査を続ける考えだ。 

アメリカコアジサシは北米に生息する海鳥で、北米の沿岸部で繁殖し、中南米やハワイなどに渡って冬を過ごす。14年、同市で国内への渡来が初めて確認された。同会と同研究所が同市須田浜海岸でコアジサシの調査中に見つけた。

2羽が確認され、うち1羽は12年7月、米ノースダコタ州で捕獲され、足環を付けて放鳥された個体と分かった。当時、東アジアで確認された事例はなく、同市までは直線距離で8934キロ飛んできたことになるため、驚きをもって受け止められた。

同市は、地形や気候に恵まれ、愛鳥家からは「海鳥の楽園」と呼ばれる。研究者によると、温暖化など気候の影響か、アメリカコアジサシの分布は近年広がりを見せている。

同市への飛来は14年に続き、16年と今年も別の個体が確認された。さらに、別に飛来した絶滅危惧種にも指定されるコアジサシに獲物を贈る「求愛給餌」が確認された。同会メンバーらが見守る中、5月に抱卵、6月に交雑ひな2羽が誕生した。

環境省の許可を得て捕獲調査を行い、ひな2羽と親鳥2羽に標識リングを装着し、放鳥した。徳元さんによると、いずれも8月ごろに日本から飛び立ち、アメリカコアジサシの故郷・北米に向かったか、コアジサシが飛来するオーストラリア方面に飛んだとみられるという。徳元さんは「元気に育ったひなが、親鳥とまた来年戻ってきてほしい」と話す。

交雑ひなが確認された同市波崎の営巣地は、利根川沿いの造成地。波などから守るため、今年2月に約50センチのかさ上げ工事が行われ、「卵やひなが流されることなく、順調に繁殖した」(徳元さん)。

同研究所の茂田良光客員研究員によると、鳥の異種間の交雑は珍しくないが、絶滅危惧種のコアジサシとアメリカコアジサシとの交雑は世界でも発表例がないという。「コアジサシより体が一回り小さいアメリカコアジサシの方が雄だったことも、ペアとしてうまくいった要因ではないか」と分析する。

同会は14~20日、同市波崎の波崎東ふれあいセンターで野鳥写真展を開く。徳元さんは「珍しい交雑ひなや、野鳥の様子を知ってほしい」と話している。

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