《上州ブランド図鑑》ホクト59 デザインと実用性 生活彩る木の家具

上毛新聞
2017年8月28日

美しい木目と素朴なデザインに目を奪われる。木のぬくもりを生かしつつ、実用性がある家具や小物の数々。木工業が盛んな上野村で誕生したブランド「ホクト59」が国内外から注目されている。スプーン1個が縁となり、椅子やテーブルを注文する人も多い。目指すのは「帰りたくなる家」の実現。こだわりのものづくりがファンの心をつかむ。(鶴田理紗)

代表の関根北斗さん(33)は埼玉県上尾市で生まれ育ち、中学生の頃から趣味の釣りで使う木製ルアーを手作りしていた。就職を考え始めた大学生の時、ルアーを作る会社の求人がなかったため、「まずは木の勉強をしよう」と家具職人を志した。

◎移住し職人に
インターネットの検索で「家具職人 募集」のキーワードを打ち込み、木工業の盛んな上野村と出合った。同村森林組合に就職して移住。木工を基礎から学び、4年後に独立した。同村楢原に工場を建て、妻のさち子さん(34)との制作が始まった。
手掛けるのはダイニングセット(椅子4脚とテーブルで60万円~)が中心だが、今ではホクトの代表作となったマグカップ「mogu cup」(税別8千円~)や盆、しゃもじといったキッチン用品も作る。
原木をそのままくりぬいた素朴なデザインや、丸みを帯びて手になじむ形状に一目ぼれするファンは多い。最大の魅力は「使う人目線」に立った丁寧なつくりだ。
木材は環境変化で反ったり割れたりしやすい。道具として長く快適に使い続けられるよう、さち子さんと共に試作し、自ら使用を繰り返して完成形を探っている。

◎大量生産せず
材料は1~3年乾燥させたものを加工し、完成までに塗装を6、7回重ねる。洗ってすぐに使うカップやトングには、耐水性に優れ、染みができにくいポリウレタン塗装、オイルは高品質の「オスモオイル」を使うなど、小さな道具でも実用性を追求し、用途ごとに加工法を変える。
妥協しないものづくりの姿勢が使う人の心をつかみ、購入希望やリピーターの獲得につながっている。
現在はJR高崎駅構内の土産品店「群馬いろは」や上野村の「cafe yotacco」、東京や神奈川、滋賀、島根の雑貨店、食器店など十数店舗で販売している。
独立当初の主戦場は全国各地で開かれるクラフトフェアだった。開催情報を探しては片っ端から応募し、青森や静岡にも出向いた。
一つ一つ手作りするため、大量生産はできない。クラフトフェアは各地から集まるファンと対面し、作り手の思いと一緒に製品を届けられる良さがある。「欲しい人に直接届けること」を大切にするさち子さんにとって、理想の場だった。
「自分たちが納得いくまでこだわった物を、信頼できる人に託したい」とさち子さん。今でも大手からの大量注文は受けず、売り込みもしない。クラフトフェア会場で出会った個人経営の雑貨店主らを通し、ファンを広げている。

◎米へ初輸出
昨年10月から、写真共有アプリ「インスタグラム」を見た米国・ニューヨークの雑貨店から、カップの注文が入るようになった。初めての輸出で、現在も続いている。北斗さんは「木工が盛んな米国で、わざわざ選んでもらえた。一つ夢がかなった」と話す。
昨年末、日本政策金融公庫高崎支店の融資を受け、工場を上野村から富岡市に移した。「実際に家具を見たい」という要望が増え、展示場が必要になったからだ。
2019年には新品だけでなく、年月をかけて使い込み、深みが出た商品も展示し、“ホクト59のある暮らし”を体感できる空間をオープンさせる計画もある。
夢は、時代を超えて次の世代にも使ってもらえる家具を生み出すこと。カップ1個でも修理を受け付ける理由には、そんな思いがある。「家具には、帰りたくなる家をつくる力がある。生活を豊かにするものづくりを、これからも続けたい」。

◎木工業盛んな上野 来月16、17日クラフトフェア
「ホクト59」が誕生した上野村は木工業が盛んだ。1970年代から、当時の黒沢丈夫村長(故人)が、豊かな森林資源を生かした産業を育ててきた。
9月16、17の両日開かれるクラフトフェア「上野村フェスティバル」は19回目を数え、毎年5千人ほどが訪れる。今年は村内外から44作家が出展する。
村が新生児に村産の木で作ったおもちゃを贈る「ウッドスタート」活動も、2015年に始まった。
課題は後継者不足だ。現在、森林組合と十数人の木工作家が木工業を担うが、高齢化が進む。村は14年、村内で木工技術を学びたい人に生活費を助成する制度を創設した。
9月1日には、村の木工業の魅力を紹介するシンポジウムを開く。村商工会は「村で工房を開きたい人に来てもらいたい」と呼び掛けている。

【データ】
「ホクト59」は2010年に上野村で設立。59は関根北斗代表の生まれた昭和59年から取った。富岡市内の工場での見学や販売はしていないが、専用ホームページで家具を注文できる。マグカップやキッチン用品は取扱店や出展イベントで販売している。

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