梅雨に輝く深緑 天然記念物で入場倍増 チャツボミゴケ公園 中之条

上毛新聞
2017年7月10日

強酸性の水が流れる場所で育つ希少なコケの群生地「チャツボミゴケ公園」(中之条町)が人気だ。国の天然記念物指定が追い風となり、4月下旬の営業開始から6月末までの入場者は2万4000人を超え、昨年から倍増した。旅行会社のツアー客に加え、一般客が急増している。町は「観光の目玉」と位置付ける一方、来年度から駐車場を遠くに移すなど環境保護との両立を目指す。

町によると、営業を開始した4月28日から6月30日までの入場者は前年同期比107%増の2万4384人だった。
公園を含む芳ケ平湿地群がラムサール条約湿地に登録された2015年ごろから、旅行会社がツアーに公園を組み込むようになった。12年に2万1140人だった年間入場者は15年3万1344人、16年5万5674人と増加。天然記念物指定でさらに注目が集まり、一般客が大幅に増えているという。
昭和期に露天掘りで鉄鉱石を採石していたという公園は、湧き出した鉱泉のにおいが立ちこめる。群生地は約6万3千平方メートルに広がる。公園は、12年に町に移譲されるまで企業の保養所の敷地だった。奥まった山間部で「知る人ぞ知る場所だった」(町職員)が、紅葉とコケの深緑色のコントラストや初夏の新緑とコケの風景など、季節ごとに変わる美しさが徐々に注目を集めた。
一年で1番美しいとされる梅雨時季に訪れた小林孝章さん(69)=伊勢崎市=は「鮮やかな緑色がきれいで、雪の時季も見てみたい」、山辺トシ江さん(70)=桐生市=は「場所は分かりづらかったが規模が大きくて驚いた。本当にすてきできれい」と圧倒された様子だった。
車で20分の場所にある草津温泉を訪ねるバスツアーのコースにもなり、多いときは1日800人近くが訪れる。町観光商工課の関口信一課長は「当初はこんなに来るとは思わなかった」と苦笑いを浮かべる。
ただ、観光客の増加で環境への影響も懸念される。町は外来種の侵入を防ぐために来年度から、群生地から約300メートル離れた今の駐車場を閉鎖し、1キロ手前に新しい駐車場を設ける。観光客の靴裏に付いた外来種の種子を取るためのシートを設置する考えもある。
高齢の観光客が多いため、群生地の近くまで行く5人乗りの電動カートを10台導入し、特産品や地元の野菜の直売所もつくる方針だ。今年の開園は10月末までで、来年は4月下旬から公開予定。

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