「眠り猫」再び“熟睡”  東照宮の国宝 薄目に修理後1カ月半

下野新聞
2017年6月20日

 昨冬、59年ぶりの大規模修理が完了した日光市山内の日光東照宮・彫刻「眠り猫」(国宝)が、修理前とは異なり薄目が開いている状態だったため、今年1月に塗り直され、目を閉じた姿に戻されていたことが19日までに分かった。約380年前の完成当初の図面は存在せず、過去20回近くの修理でも、その都度、職人の個性で“変化”があったともいわれており、世界に誇る東照宮の文化財修理の難しさが改めて浮き彫りとなった格好だ。

 修理に当たった日光社寺文化財保存会によると、眠り猫の彩色は大正、昭和期に描かれた見取り図を元に復元された。図では両目を黒い線で表現しているが、修理直前の本物の右目は中央部分の色が濃かったことと、「起きているように見える目」という伝承から、薄目を開けた状態となった。約1カ月半“起きた”ようになっていた。

 修理完成後、観光客から「目が開いている」と指摘があり、同会が修理を検証。結果的に伝承を史料で証明することができなかったため塗り直した。所有者の東照宮は「間違いではない」と修理の結果を受け止めている。

 同会は、時代ごとに複数ある彫刻の見取り図の彩色が、それぞれで異なる部分もあるため、「本来の姿が分からず、修理のたびに職人の個性が出ている」と説明している。

 同じく新装された彫刻「三猿」では、修理前後で猿の顔や手の彩色に違いがあることを指摘する観光客もいる。同会は「彩色の寸法が示されていない見取り図を見ながらの作業。江戸時代だけでも十数回の修理が行われ、職人の個性が表れていた。それが伝統でもある」としている。

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