県北芸術祭の絆、続く 古家電楽器プロジェクト 日立

茨城新聞
2017年6月19日

県北6市町で昨秋開かれた「茨城県北芸術祭」で生まれたアーティストとボランティアスタッフとの絆を切らさず、活動を継続させる動きが出ている。日立市多賀地区を拠点として実施された和田永さんによる古家電楽器パフォーマンス「エレクトロニコス・ファンタスティコス」プロジェクトに集った人たちによるチーム「日立オーケストラボ」だ。同プロジェクトは11月に東京でコンサートを計画。これに向け、さらに参加者を拡大させ、新たな楽器を生み出す取り組みが始まっている。 

■斬新すぎる取り組み
JR常陸多賀駅に近い同市千石町1丁目のシェアオフィス「街角縁側かどや」。昭和の雰囲気を漂わせる空き店舗を活用した同所に4日、約20人の市民が詰め掛け、日立オーケストラボのメンバー8人も駆け付けた。プロジェクトを知ってもらうための体験会だ。

アーティストでミュージシャンの和田さんが県北芸術祭での活動を映像を使って説明、徐々に仲間が増えていく過程を紹介した。

同プロジェクトは使われなくなった家電を楽器としてよみがえらせ、合奏する斬新すぎる取り組みだ。

「楽器を作り音楽を奏でるとともに、アイデアも集めている」。和田さんは参加者に呼び掛けた。

会場には、古いブラウン管テレビの太鼓や扇風機を使ったギターが持ち込まれ、参加者が見よう見まねで演奏を体験。音を出しながらメロディーを探し当て、即興で楽曲を作り出す楽しさを味わった。

扇風機ギターを体験したつくば市鬼ケ窪、会社員、大里光広さん(43)は「家電を楽器にするというアイデアがすごいし、実現するのもすごい」。

■年齢、職種超え集結
同プロジェクトは、和田さんが2015年に始めた。県北芸術祭では「家電の聖地」日立市に入り、会期前から同駅前を拠点に活動した。

日立オーケストラボが生まれたのは昨年5月。スタッフ募集のために行われた体験会への参加者などで自然発生的に結成された。和田さんとともに家電集めや楽器作りを担い、県北芸術祭閉幕前日の昨年11月19日のコンサートでは演奏者としても舞台に立った。

メンバーは20代から60歳前後までの約15人。職種を超えて日立市を中心に県内各地から集まり、製造業の会社員や自営業者が技術面を支える。

県北芸術祭実行委員会のサポーター登録をきっかけにメンバーに加わった同市高鈴町、市職員、鈴木聡さん(45)は「アイデアを出し合い、楽器として改良を加えていくのが面白い」と魅力を話す。

メンバーの関わり方はさまざまだが、和田さんは「いろいろな人と関わることでインスピレーションが湧き、とんでもないところにたどり着く」と強調。連鎖反応による創造の面白さを追求する。

■新楽器作りに挑戦
県北芸術祭で同市内には延べ25万人を超す来場者があった。一過性の盛り上がりで終わらせず、いかに今後につなげるか-。

アーティストと市民が結び付いた日立オーケストラボの動きについて、市地域創生推進課の宮内雅弘課長は「自発的なネットワークができ、次につながるのはうれしい」と歓迎する。

同プロジェクトは11月、東京で大規模なコンサートを行う。東京、京都で立ち上がっているチームとともに、日立オーケストラボも新たな楽器を作って乗り込む予定だ。4日の体験会参加者を巻き込みながら、さらに活発な展開を視野に入れる。

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