《まち里歩き》スタート地点 前橋文学館(前橋市千代田町) 「詩のまち」彩る水と緑

上毛新聞
2017年6月2日

前橋市のシンボル、広瀬川。かつては水運の交易の場として栄え、「生糸のまち」の時代には工業用水に利用された。同市出身の詩人、萩原朔太郎が好んで散策し、多くの詩碑が並ぶ川沿いを歩いた。

出発点は同市ゆかりの文学者を顕彰する前橋文学館。外の掲示板に、朔太郎の孫でもある萩原朔美館長のメッセージが張り出されていた。「言葉を軽く扱う人は、軽い人生しかおくれない。言葉をぞんざいに扱う民は、ぞんざいな国しか作れない。『言葉は存在の住居』だからだ。」。心をぐっとつかまれた。

館内は朔太郎の足跡を紹介(❶)。初めて前橋を訪れたという横浜市の会社員、藤井正紀さん(67)は「街中にきれいな水が流れ、いいところだと思った。朔太郎自身の朗読も聞けて良かった」と喜んでいた。

対岸には生家の一部を保存した「萩原朔太郎記念館」が4月、敷島公園から移築された(❷)。みそ蔵を改造した書斎では、刊行100年を迎えた第1詩集「月に吠(ほ)える」の作品も多く生まれたという。

右岸の「広瀬川詩の道」は緑がすがすがしい(❸)。同市昭和町の今井百合子さん(69)に声を掛けると、「今までいろんなコースを歩いたけど、一番気に入っている」と教えてくれた。萩原朔太郎賞を受賞した財部鳥子さん、町田康さん、入沢康夫さんらの詩碑が並び、短い言葉からもそれぞれの世界観が伝わってきた。

交水堰(こうすいぜき)で滝のような音が響いていた(❹)。国道17号に架かる厩橋の手前に朔太郎の「広瀬川」の詩碑。冒頭の「広瀬川白く流れたり」は心象風景と捉えたり、河畔にあった製糸工場「交水社」から排出された繭の白い煮汁という説もあるようだ。

厩橋のたもとのモダンな建物は国登録有形文化財の広瀬川美術館(❺)。故近藤嘉男さんが1948年にアトリエ兼自宅として建て、現在は美術作品の展示だけでなく、コンサートにも活用されている。

地下道から国道を渡ると、相葉有流さんの句「繭ぐるま曳(ひ)けばこぼるる天の川」を刻んだ碑があり、豊かな水が育んだ製糸の歴史をしのんでいた。柳橋まで歩いてUターンし、文学館の下流にも行ってみた。展望橋近くに、らせん状の作品「登る水」があった(❻)。古代ギリシャの物理学者、アルキメデスが考えたとされる揚水機の原理を生かし、伊藤隆通さんが手掛けたという。

川沿いのあちこちにアジサイが植えられていた。〈こころをばなににたとへん こころはあぢさゐの花〉。朔太郎が詩にしたアジサイの季節はもうすぐだ。
(文化生活部 天笠美由紀)

≪コースの特徴≫
川沿いの遊歩道を歩く約1.8キロ。自転車に気を付けたい。

地図 →

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