《世界遺産》高山社跡 長屋門に藤岡瓦 「だるま窯」 伝統製法で修復 往時の姿に

上毛新聞
2017年5月16日

世界文化遺産、高山社跡(藤岡市高山)にある長屋門の修復工事で、市は、市内に残る伝統製法の藤岡瓦を活用する。江戸初期建造の長屋門は、地元産瓦が使われていたとされるが、伝統の製法を引き継ぐ業者が限られ、修復に際して忠実に往時の姿を維持できるか微妙な状況だった。市や関係者は「長屋門が藤岡の伝統産業を後世に伝える遺産にもなる」と期待を寄せている。

高山社跡は養蚕法「清温育」を開発した高山長五郎(1830~86年)の生家で、明治初期設立の養蚕教育機関「高山社」の発祥地。高山社跡で最も古い建造物とされる長屋門は老朽化が激しく、2018年度の完成を目指して修復工事を進めている。

1業者のみ
門の屋根には窯印から、地元の瓦が使われていたことが判明している。江戸期以降発展した藤岡の瓦産業は、昭和の最盛期には80軒ほどの業者があったが、現在まで伝統製法の「だるま窯」を使って瓦を焼いているのは1業者のみ。量産は難しいため、約1300枚の交換が必要な長屋門の修復に活用できるか、市と業者の間で協議していた。
伝統製法を守る共和建材(同市藤岡)の五十嵐清さん(65)は大規模建築のための受注は難しいが、世界遺産の修復であることから特に引き受けたと強調。だるま窯を扱える市内唯一の職人という立場もあり、「日本の伝統技術の素晴らしさを見学者には感じてもらいたい」と意気込んでいる。

いぶし銀
伝統製法の藤岡瓦は、まきでいぶすことで生まれるいぶし銀と呼ばれる色合いや光沢が特徴。保水性があり、夏は気化熱によって建物の温度上昇を抑制する効果もあるとされる。市教委文化財保護課は「伝統を守り続けてくれたおかげで、しっかりした修復ができる。藤岡瓦によって長屋門の価値が高まる」としている。
長屋門の修復工事について市は本年度、約3200万円を計上。夏までに瓦ぶきの作業を始める。高山社跡は長屋門の修復完成後、母屋の修復に乗りだす。

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