県北芸術祭開幕1カ月 来場者、目標超す勢い

茨城新聞
2016年10月17日

県北6市町で開催中の国際アートフェスティバル「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」は17日、開幕から1カ月を迎える。各会場は週末を中心に多くの人でにぎわい、来場者数は目標の30万人を超えるペースで推移。展示施設や地元商店などの関係者は芸術祭を契機とした地域振興への期待を膨らませる。ただ、県内からの来場者が大半のため、飲食や宿泊などに伴う経済効果はまだ見通せていない。11月20日の閉幕まで残り1カ月余り。県などの実行委員会は県外向けのPRを強化し、さらなる誘客を図る。

■相乗効果見込む

同芸術祭は9月17日に開幕し、国内外85組のアーティストが計約100作品を展示する。15日に旧浅川温泉(大子町)と竜神大吊橋(常陸太田市)の2作品が新たに公開され、展示会場32カ所が出そろった。

県によると、開幕から9月30日まで2週間の来場者数は延べ約11万5千人。その後も客足は順調とみられるが、来場者へのアンケートによると、県外在住者は2割程度にとどまる。

展示会場の一つ、日立市幸町の日立シビックセンターは、有料で作品を公開する天球劇場(プラネタリウム)の9月の入場者が前年同期と比べ3割増となった。豊田瑞穂センター長は「芸術祭をきっかけに多くの人に施設を見てもらい、将来的な利用促進につなげたい」と意気込む。

竜神大吊橋を運営する水府振興公社も「紅葉シーズンには芸術祭との相乗効果で例年以上の集客が見込める」と期待する。

■にぎわう飲食店

会場周辺の飲食店では、鑑賞の合間に立ち寄る来場者の姿が目立つ。

常陸太田市鯨ケ丘地区の飲食店「釜平」は、芸術祭のパンフレットを手にした女性グループや学生らでにぎわう。店主の塩原政靖さん(61)は「(客は)週末は普段の倍」と話す。

旧市自然休養村管理センターに出展した三原聡一郎さんの苔(こけ)をモチーフにした作品にちなみ、同市増井町の「里山ホテルときわ路」は、期間限定スイーツ「苔ドルチェ」をレストランで提供。9月のレストラン売り上げは前月比23%増と好調で、藤野龍一取締役は「芸術祭を機に初めて来店する人も多い」と実感する。

■誘客促進に意欲

県は、県外在住者向けに6市町の旅館、ホテルなどで会期中に使える宿泊割引クーポンを発行。統一のロゴマークを付けた芸術祭推奨の土産品も販売するが、経済効果が広がるかは見通せない。

北茨城市商工会は、同市大津町の県天心記念五浦美術館ロータリー付近で土日祝日に「お休み処」を開設するが、土産品を買う人は少ないという。

総合ディレクターの南條史生氏は「地元にもっとお金を落としてもらうためにも、県外からの来場者を伸ばしたい」と述べ、世界的建築家、妹島和世さんが旧浅川温泉に開設した足湯施設などを目玉とする誘客促進に意欲を見せた。

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