《山の日8・11 期待と課題(5)》次代へ 生態系維持へ植栽

上毛新聞
2016年8月11日

「山の日」を前にした7月23日、濃霧に覆われた谷川岳天神平(みなかみ町)に長靴姿の男女約60人が集まった。標高1300メートルのロープウエー駅付近で、群生したイネ科の外来種を除去し、ニッコウキスゲを移植するためだ。
「外来種のせいで、山の景観が変えられてしまい、悪影響が出ている。5、6年はかかるが、本来の姿に戻したい」。作業前、主催した谷川岳エコツーリズム推進協議会の阿部利夫副会長(66)は、参加者に語りかけた。
一行は、谷川連峰から湧き出た天然水を販売するJR東日本ウォータービジネス(東京)の社員ら。商材である水を守ることにもつながると、推進協の提案に応じる形で参加した。
駅付近の斜面は冬場、スキー場となる。整備された昭和30年代、ゲレンデに適しているとして、オオアワガエリなどの外来種が植えられた。自然交配した「雑種」も存在する。本来、山にないはずの植物によって生態系や景観への影響が懸念されている。
推進協は2008年に発足。地域の自然環境の大切さを理解し、保全への意識を高めてもらおうと、解説付きの登山ツアーを企画している。一般ボランティアを募り、谷川岳山麓で外来種の除去を始めたのは3年前。今年は、これまで手を付けていなかった天神平での植栽を始めた。今後、別のエリアに広げる計画だ。
参加者は、外来種が群生している現状を目の当たりにした。同社社員の高橋恵美子さん(高崎市)は「生態系が変われば山の環境も変わってしまう。子どもたちに美しい山を残すため、活動を継続する必要がある」と言葉をかみしめた。
昨冬の尾瀬沼の累積降雪量は、平年の約6割で観測史上最低だった。少雪も影響して利根川上流8ダムの貯水率が下がり、6月から10%の取水制限が続いている。山の日が始まる今年、山に関連した環境異変が懸念される身近なニュースが相次いだ。
阿部さんは語る。「山の日ができたのだから、さらに保全意識を高めなければならない。本来の美しい山のまま、次代に引き継ぐのがその時代の責任だ」

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